目覚める魔王 バイト中の勇者

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午後七時、本日のバイト時間を終えたエリスは賞味期限の切れた残り物の弁当を店長から貰い、城下町から一時間ほど離れた場所にある旧市街の自宅に自転車で帰宅した。 城下町は車やバイク、バスや魔獣便が走っているだけでなく、夜の闇に光を照すライトが様々な色を出す事で鮮やかになり、昼とは違った雰囲気になる。 そんな中、エリスはどこにも寄る事はしなかった。城下町から旧市街に向かうと華やかで、コンクリートで埋め尽くされた発展した街から、暗闇で静けさが広がる町へと切り替わっていく。旧市街にいるのは発展に取り残された老人達や、貧しい人達が住んでいる。 その旧市街にある木造二階建て、風呂がなく、共同トイレ、二階の一号室にエリスは住んでいる。部屋の中はワンルームでTVなどの娯楽の物はなく、生活に必要な最低限な物しか置かれているだけ。天井も雨漏りを防ぐためにブルーシートがかぶせてある。 エリスは勇者でありながら貧乏だった。 「あれから来なかったな…………諦めたのかな。でも…………あの登場の仕方は普通じゃないでしょ。次は普通に来てくれるよね」 エリスがバイトをしている間、パートナー候補のサイガが来る事はなく、念のためにトイレに入ってみたりしたのだが、前の様な反応を見せる事はなかった。
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