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「はぁ…………」
エリスは店長から貰った弁当を置き、一階にある共同トイレに向かい、ドアを開けた。
「ハァ……ハァ……やっと誰もいない時に出てこれたぞ。これで流されずにすむ」
「……何でアンタはトイレにばかり登場するのよ!!」
「ち、違う!!俺は変態じゃない」
エリスがトイレのドアを開け、中に入ってきた事で、サイガはもう一度流されると思ったのか、一生懸命弁解しようとしていた。
「分かってるわよ。魔界紹介所から連絡があったの。アンタが私のパートナー候補だって。まずは契約しないとね。店長が流したのも入れると、これで三度目だから、最後の機会なんでしょ。契約も仮契約だから問題ないわよね。話はそれからよ」
「……いいのか?」
先程まで変態扱いされていたサイガはそんな簡単に契約してくれるとは思ってなかったのだが、エリスにとって、サイガとの契約を逃すわけにはいかないのだ。しかし、エリスはそう言いながら、サイガは手を差し出すもそれを握りかえそうとはしなかった。
「……手を洗ってからにして」
サイガはゲートを通ってきたとしても、出てきたのはトイレの中であり、洗っていない手を握る事はエリスには出来なかった。サイガはエリスに言われたように手を洗い、『コンプリート』と唱え、手を握った腕にパートナーの証である腕輪が装備された事で契約は完了された。
「これで一応契約完了ね。戻るまでの時間は私の部屋に来るといいわ。色々と聞いておきたい事があるし」
エリスとサイガの契約が完了しても今は交渉の時間であり、時間が過ぎる事で魔界に強制的に戻される事になっている。それにトイレに流されるのはサイガもこりごりだろう。
「それは助かるけど、ここがエリスが住んでる場所なのか?勇者だから良い家に住んでるいるとばかり思っていたが」
サイガは周囲だけでなく、案内された部屋を見ても勇者が住んでいる家に見えなかった。
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