目覚める魔王 バイト中の勇者

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「この部屋がそうじゃ。床に未完成の魔法陣が描かれておるじゃろ。誰かが描いたわけじゃなく、憎しみや絶望が増えるたびに進み、完成した時が魔王サイガの復活と言われておるな」 復活の間には無数の紫の炎に照らされていて、部屋の中央に置かれてる棺を中心に魔法陣が半分描かれ、続きを描くために紅い光が留まってる。 「ガイドさん、魔法陣も半分だし、棺の中を見ても構わないですか?」 人間の女性がそう言うと次々と『見たい』と声が上がっていく。 「別に構わんが……サイガが復活してもガックリするだけと思うぞ。アニメの影響からか孤高の魔王と呼ばれ、クールな印象を与えていたようじゃが、皆が思っているような者ではなく、変態なだけで相手にされなかっただけ……」 ガイドの言葉に女性達は耳を傾けず、棺に一直線に向かったのだが、ある者だけがガイドの言葉を聞いていた。 「誰が変態だ!誰が!」 女性達が棺の蓋を開ける直前、棺が突然揺れ始め、蓋が勢いよく飛び、棺の中から腰まで届く黒髪と前髪で少し隠れた黒い瞳をした人間の姿をした少年が出てきた。少年を見た女性達は一時硬直した後、次々と逃げ出していく。 「くっくっくっ……俺の姿に恐れをなして逃げ出すか。これが本当の姿だ。断じて変態では」 「へ、変態!こんなの聞いてないわよ」 逃げ出す女性が口を揃えて『変態』と叫び、持っていた団扇やタオル、いつのまにか拾った壁や柱の砕けた石を少年に向けて投げた。 「誰が変態……痛っ……物を投げ……石は痛いんだぞ!!」 少年がそう言っている間に観光客全員が復活の間から出て行き、残ったのはガイドだけで、蝙蝠達に何かを指示した後、少年をじっと見た。 「くそっ!残ったのは魔族のガキ一人か。おい!お前は俺が変態に見えるか」 少年は凄みを出して、ガイドに自分が『変態』ではないと言わせないようにしたのだが 「……サイガ。己の姿をよく見てみるんじゃ。どう見ても変態しか思えんぞ」 ガイドには凄みが効かなかっただけだなく、少年の事を魔王であるサイガと呼んだ。 「その声……アイシャか!何でそんな姿してるんだ?それに俺の姿が何だって……服着てないじゃん!」 サイガは何も着ていない全裸の状態だったために変態と呼ばれ、観光客は逃げ出したのだった。
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