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「ちょっと……何してんのよ。アンタは本当に私を生徒会に入れたいわけ」
サイガはマキナに目を向けていたせいで、周囲の警戒を疎かにしてしまい、エリスが来た事に気付かなかった。それにしても大きな学園内で、数少ない顔見知りとの遭遇率が高いのだろうともサイガは思った。
「これは……俺の意志じゃなくて……仕方なくだ」
「ふ~ん……私はアンタのおかげでバイトが出来なくて、生徒会に入ろうともなったら、もっと削られるのに……それを知りながらも手伝うのね。私が無償で先生達の手伝いをさせられている時に」
エリスの背中からゴゴゴ……と怒りの形がサイガの目にも見えるそうな勢いがあった。
エリスは授業をサボったり、学園にいないのは理由がある。エリスは無償で先生達の研究を手伝わされるからだ。それは知識などではなく、武器開発や魔法開発など。普通の人間では耐えられない体としても勇者であるエリスならばという事なのだ。これがエリスがラキアス学園の特待生となれた理由の一つでもある。
「パートナーのくせに、この仕打ちはないんじゃないの。私の怒りは買い物に付き合う事でしか静まらないわね。それもサイガのお金でね」
サイガが持っていた残りの紙束をエリスは破り捨て、サイガの腕を引っ張っていく。あまりの力で抗う事も出来ない。
「理不尽だ!!どんだけ俺をこき使えば気が済むんだよ」
エリスとサイガが自転車置き場に着いた。だが、エリスの自転車がいつもと違っていた。嫌がらせなのか、サドルが抜き取られていた。
「誰よ……まぁ、サドルもサイガに買ってもらうからいいか。二人乗りするから、アンタが漕ぎなさいよ」
エリスの自転車の後ろには荷物を置く事や人を乗せる場所がない。それは後ろが立ち乗りになり、ペダルを漕ぐ者はサドルがないのに座る事になる。つまり、お尻に大きな痛みを与える事になるのだ。
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