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「お前は鬼か!!こんなのに座ったら痛いだろ」
「えっ?こういうのが好きなんじゃないの。店長がそう言ってたんだけど……まぁ、嘘だとは思ってたけどね」
嘘だと分かったのに、サイガにそこに乗れとエリスは手招きをする。
「ちょっと待った!!君達が二人乗りをする事はない」
エリスの強攻を止めたのは、校門で仁王立ちしている店長だった。後ろから夕焼けの光が当たり、遠目からはヒーローみたいに見えるかもしれないが、実際は通り過ぎる学生から変な目で見られていた。それにいつもの店長の姿とは若干違っていた。
「店をほったらかしにして、何してるのよ!!そんな場所にいたら通報されてもおかしくないんだから。捕まったら、私にも迷惑が掛かるだからね」
「大丈夫だ。エリスファンクラブ用のTシャツを装備しているし、私は会員番号No.2だからな」
自信満々に店長はサイガとエリスに会員証を見せるが、それが逆に怪しく見えてしまう。
「それよりも自転車のサドルが無くなり、困っているのだろう。それならば……とう!!」
どこからか音楽が流れだし、店長は宙に跳ぶと体がバラバラになり、違う形へと変形していく。機人は体をカスタマイズ出来、変形機能も付けられたりする。店長の姿がいつもと違っていたのもそのためだ。
そして、店長が変形したのは自転車。問題があるとすればサドル部分が店長の顔になっている事だ。
「さぁ!!エリス、乗るがいい。バイクよりも自転車のペダルが踏まれている感、自分が踏まれているようなのが良いんだ」
店長は変態丸出しだった。自分に乗せるためにエリスの自転車のサドルを隠したのではないかと疑いたくなる。
「……もしかして、店長がサドルを隠したんじゃないでしょうね。自転車に変形したのも怪しいし」
「それは違うな。そんな犯罪はしない。エリスがいないと店に客は来ないし、週末しかバイトが出来ないのなら、私が寂しいから会いに来ただけだ。分かったのなら、私の顔に乗せれば……おっ……」
店長に乗ったのはエリスではなく、近くにいた太った男の学生。顔がサドル部分だったせいか、周囲を見る事が出来ず、エリスは乗っても壊れないからと店長が変形した自転車を勧めていたのだ。
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