魔王は暗躍しない波乱の生徒会選挙

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買い物が終わる頃には、夕空から夜空へと変化してようとしていた。商店街も学生よりも仕事帰りの大人達が増え、居酒屋に向かうものや露店で家のお土産を買う者達で溢れていた。 「自転車も直った事だし、家に帰るとしますか」 買った物が多く、サイガとエリスは自転車に荷物を乗せるだけで押して帰る事にした。エリスも機嫌が良かったのか、サイガに荷物を持たせて、自分は自転車に乗って帰る事をしなかった。 サイガはふと商店街にある時計台を見ると六時六分を示し、違う時計の秒針が六秒を指した時、夜空は消え失せ、巨大な穴が出現し、その穴に引っ張られるかのように地震が起きた。 それは六時七分になった時には巨大な穴は消え、元通りの夜空に戻り、地震も治まった。 「さっきの地震……空にゲートみたいなのが見えたんだけど……サイガも見たわよね」 エリスはサイガに確認するように聞いてくる。それは周囲にいる人間や魔族、機人達は地震が起きた事も、空に巨大な穴が空いた事も知らないかのように行動しているのだ。 「……ああ。空に穴が開いたのは俺も見た。エリスが感じたのは地震じゃない。震えたように感じたのは、穴から流れ出た……俺とエリスに向けての殺気だ。けど、巨大な穴の出現に誰も気付かないのは」 「きゃあああ!!」 商店街から女性の悲鳴が聞こえ、エリスはその悲鳴が聞こえた場所に走った。サイガも自転車を押しながら、後を追い掛ける。 そこには狼型の魔獣が咆哮し、周囲の露店を破壊していた。 「そこのアンタ!!一体何があったの!!」 「魔獣便をしていた魔獣が突然暴れだしたんだよ!!アンタも逃げたほうがいい」 エリスは魔獣がいる場所から離れようとしている男から状況を聞き出していた。 「サイガ!!魔族なら、あの魔獣の状態がどうなのか分かる?店とか壊してるけど、人達を襲うのだけは堪えてるように見えるのよ」 サイガは魔獣を見ると、瞳が自我がある状態と暴走状態の真っ赤な瞳が交互に変わっている。暴走状態は魔獣の本性でもあり、人間を喰おうとしてもおかしくない。 「……暴走状態に入ろうとしている。それを自我が押さえ込もうとして、人を何とか襲わないようにしているんだ」
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