魔王は暗躍しない波乱の生徒会選挙

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魔獣は体を建物の壁に体当たりをしているが、それは破壊しようとしているのではなく、自我を取り戻そうとしていた。 「誰か……俺を……止めてくれ……このままでは……パートナーに……迷惑が……」 魔獣は途切れ途切れに助けを求めていた。それは自分よりもこの人間界のパートナーを気にしての事だった。魔獣が罪を犯せば、パートナーも罪となるからだ。 「暴走状態になりそうなら、気絶させたら元通りになるかもしれないわよね」 エルザの体からは魔力を感じる事が出来ず、武器も持たない状態で魔獣と戦おうとしていた。 「無茶するな!!ここは俺が何とか」 サイガも武器は持っていなかったが、魔法を使う事が出来る。エリスが聖剣を呼び出しても、その威力で殺してしまう。 「こっちを向きなさい!!私が助けてあげるから」 魔獣は声に反応して、エリスの方に向いた。だが、それが間違いだった。魔獣はエリスとサイガの姿を見た途端に瞳が真っ赤になり、口からはよだれが大量に溢れ出した。完全に暴走状態になり、二人に殺気を放つ。その殺気は巨大な穴から流れ出たものに似ていた。それが関係しているのか、魔獣の牙や爪が鋭くなり、筋力も膨張し始めていた。 魔獣は咆哮は先程とは違い、逃げる者達を動けないように竦み上がらせる。ここで戦えば周囲に被害が及ぶ事からサイガとエリスの攻撃が制限されると魔獣は察しての行動だろう。
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