魔王は暗躍しない波乱の生徒会選挙

15/49
前へ
/105ページ
次へ
「こういった状況で、アンタはオバサンに何やってんのよ。変態的な行動してる場合じゃないのは分かってるでしょ」 「誰も変態的な行動なんてとってないだろ!!魔法を使おうとしただけだ」 「頬に手形を残して、よく言うわよ。それに魔法の発動に失敗したじゃない。杖が灰になるなんてどういう事よ」 サイガの頬にはオバサンがおもいっきり叩いたせいか、その痕が残っていた。エリスは冷たい目でサイガを一瞬見ただけで、魔獣から視線を外さないようにしている。しかし、そんな状況でもエリスはサイガに文句を言っていた。 「やれやれ……勇者ともあろう者がすぐに倒さないとはな。助けなければならない者達がいるのに、パートナーと口論とは」 断頭台の刃が落ちるように、風魔法の刃が魔獣の首を切り落とした。そして、首が無くなって倒れた魔獣の体の後ろからキースがサイガとエリスがある場所に歩いてきた。 キースの手には魔導書があった事から、風魔法を使ったのはキースだろう。助けられた人間や魔族はキースの周囲に集まり、礼を言っている。 しかし、エリスだけはキースを怒りを込めた視線を送っている。 「何だ?助けられた事が屈辱だという目をしているな」 「屈辱?そんなの思ってないわ……何で殺したのよ。あの魔獣を止める方法があったはずよ。あの魔獣のパートナーが悲しむとは思わなかったわけ!!」 魔獣の死体は、警備の者達が到着した事で車に運ばれていく。誰も魔獣が死んだのを悲しまない。それは殺されそうになったのだから当然なんだろう。だが、エリスは魔獣がパートナーを心配しているのを聞いた。完全に暴走状態になる前は、自我で人を殺さないようにもしていたのも知っている。 「そのために周囲の人間の安否はどうでもいいとでも言うのか?それに魔獣の犯した罪はパートナーにも降りかかる。その前に殺した事で罪は消された。パートナーも感謝しているはずだ」 警備の人間がキースに近付き『キース隊長、ご苦労様です』と敬礼した。キースは魔獣を殺した事で罪にはならない。マキナの側近であるだけでなく、若いながらも警備隊の部隊長を任されてるほどの実力者であり、状況により犯罪者を裁く権利を持っていた。
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加