魔王は暗躍しない波乱の生徒会選挙

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ミクス城の王座の間。そこには王が玉座に座り、周囲には多くの兵士達がおり、その中央にサイガとエリスは立たされていた。その場には王女であるマキナの姿はなく、その代わりに大人バージョンのアイシャが王の側にいる。アイシャはサイガやエリスを見ず、欠伸をしてる事からどうでもいいとでも思っているに違いない。 「勇者エリス、ワーエンド殿の弟子であるサイガ、二人に頼みたい事が」 「嫌よ。直接本人の前で言わないと無駄だと思ったから、ここに来ただけよ」 エリスは王の言葉を遮り、何を頼もうとしているのかを聞かないままに拒否した。何も抵抗せずにミクス城に来たのも、兵士達に言っても無駄であり、何回も来られてはバイトの邪魔になると分かっているのだろう。 その言葉に口を押さえながらもアイシャが笑っていて、王も笑い声が聞こえたのか、ゴホンと咳き込む事で、アイシャを睨む事はせず自粛させた。 「ふぅ……まずは話を聞いてから」 「用件はアレでしょ?暴走化の件……原因でも調べろとこでも言うつもり。魔王の復活って噂も流れているようだし」 「くっ……暴走化の件だが……魔王復活とは関係がない。この暴走化はミクス国内だけで起きている事であり、他国、他の大陸では起きていない。どこかの国が我が国を混乱させるべく何者かを送ってきたと考えておるのだ。それも魔界の者達を暴走させる事が出来るほどの力を持った者を」 王は魔王の復活の影響ならば、他の大陸や国々でも暴走化が起きているはずだと判断したようで、王の側にいる事から、魔王の仕業ではないと言ったのかもしれない。 「そんなの兵士達でも、街の警備隊でもやらせたらいいじゃない。街の平和を守っているのは私じゃないし、そんなに暇じゃないのよ」 エリスは勇者らしからぬ言葉を連発していた。暇じゃないというのもバイトがあるからとでも言いかねない。 「お前は勇者なのだろ?世界を……国を……街を救うのが役目じゃないのか。警備隊は暴走化の魔界の者達が出た時の対処、兵達は他国への警戒のために動かす事が出来ない。それに相手が強いと分かっているのに、無駄な犠牲は出せんのだ」
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