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「好きで勇者になったわけじゃないし……勇者ならどうなったって構わないと思ってるんじゃないの?一応、私もミクス国の住人なんですけど」
エリスの暴言に兵士達は槍を向けようとするが、王はその行動を止めさせた。
「サイガよ……お前はどうなのだ。同胞が暴走化し、己もその可能性があるのだ。どうにかしようとは思わないか。パートナーの力を借りれば、解決するかもしれないのだぞ」
王はエリスに口では勝てないと判断し、サイガに標的を変え、エリスを説得させようとしているのが分かる。
アイシャもサイガを見ており、『恩を売るなら今だ』とでも言うような目をしていた。それだけでなく、エリスもサイガを睨み、何も言わせないようにプレッシャーを掛けてくる。
「はぁ……王様、エリスの言ってる事は正しいと思う。好きで勇者になったわけじゃないし、そのために危険な目に合うのはどうなんだろうな」
エリスはサイガの言葉に頷いている。エリスに自分が勇者だという自覚がないのはサイガも分かっている。それならば、エリスをどうやって動かすか。
「だから、それ相応な報酬を貰えたら、俺達は動く。無償で命を賭ける奴なんていない。兵士達や警備隊だって給料を貰って働いてるんだからな。勇者だからって無償で働いてたら、どうやって生活するんだって話だ」
エリスを動かすためにはお金が一番であり、王の頼みを聞かないのもバイトに入れず、お金を稼ぐ事が出来なくなるからとサイガは考えた。それは勇者としてどうなのかとサイガ自身も思うが、言っても仕方がない。
「なるほどな……一理ある。サイガはこう言っているが、報酬さえ払えば動いてくれるのか?」
「勿論よ。無償じゃなく、仕事としてならやるわよ。報酬は出来高で構わないから。最低でも家一軒分の金額は払ってよね。それぐらいは払えるでしょ」
あんなに嫌がっていたのだが、報酬が入るのならとエリスは速答した。
「……そうか。ならば家一軒分の金額は必ず払うと誓おう。その代わり、確実に解決する事だ。それに……この者とも一緒に行動してもらう」
王の言葉の後に現れたのはマキナだった。その姿はドレスを着ておらず、学園の制服を着ており、その手には大きな荷物を持っていた。
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