魔王は暗躍しない波乱の生徒会選挙

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サイガはシリアの言葉で、魔族の死体を見て、その後に周囲と会長候補の死体を見た。 ここは人気のない場所であり、会長候補の死体がある場所は校舎の壁に接しており、一部が壊されているが、それ以外に壊されている箇所はない。近くにある木々も折れたりしていない。 会長候補の死体と魔族の死体は離れていて、魔族の死体はうつ伏せで倒れている。首は上半身付近ではなく、下半身近くに落とされていた。さらに足が向いてるのは校門で、そこから魔族は校門とは逆方向に行こうとしているのが分かる。 「確かに……魔族の死体だけじゃなく、状況もいつもと違っているな。それと……キースが裁いたのを誰か見た奴はいるか?」 「キース先輩がですか……誰もいないと思いますよ。一番は私でしたからね……って、どうしたんですか?」 サイガはキースを追いかけるために走り出した。それはどういった状況だったのかを聞くためだった。 疑問はいくつもあった。暴走化は人にはすぐに攻撃はせずに、建物とかを壊す。それは自我が残っていてるからだろうが、パートナーに攻撃するとなれば躊躇いが出てくるはずなのに、壊れた場所は一ヶ所であり、それは会長候補を殺した時、壁に接していたせいで壊れたのに過ぎない。 つまり、今回は躊躇いなどなく、最初から完全な暴走状態になっていたという事になるのだが、それも違和感が生まれる。 魔族が暴走状態であれば、人気のない場所から大勢の人間がいる場所に向かう。それが校門とは逆方向、さらに人気のない場所に行こうとするのはおかしい。それにキースが校門から入り、魔族と戦闘したとするならば死体の向きが逆向きになる。 断頭台の刃の魔法を使ったのであるならば、首が落ちるも下半身付近にはならず、上半身近くになる。 逃げる相手に背中から首を落とすための魔法を放てば、体だけは前に進もうとして、首は後ろに落ちる。 これは想像だが、会長候補はパートナーの魔族に殺されたのではなく、別の誰かに殺され、魔族も同じ相手に殺された。それが出来たのはキースという事になる。
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