おうちに帰ろう

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 昨日まではね、この子の他に、もっと沢山猫が居たんだよ。  家は猫屋敷って呼ばれててね。  白やら黒やら、三毛や、トラ縞、外国産みたいに毛の長いのやら、そりゃあいろんな柄の猫が、家ンなか中うろうろしててね。  それがこの頃、1匹、2匹と居なくなってね。今じゃこの、年寄りのぶち猫だけになっちまった。  なにやら世間様では、この世が終わるとかなんとか、騒いでるそうじゃないかね。    知ってるかい?猫にも掟があってね。  人間に、死に際を見せちゃあいけないンだそうだよ。  きっと家の猫たちも、掟を守ってどっかに行ったと思うんだよ。  だけど、このぶちだけは見ての通り、あたしに貼り付いて離れやしない。  あたしと一緒でどうせ老い先短いし、きっと掟なんかどうだっていいんだろうねえ。  そんな訳だから、あたしも動けないんだ。  じいさんが戻って、行くって言うんなら考えないでもないけどね。  ああ、そうか、お宅さんたち、あたしを避難させようって来てくれたんだね?  一体、何処に連れ出そうって言うんだい?
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