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有紗の携帯電話にも、ツトムにも電話したが繋がらず、部屋も訪ねたが留守だった。ツトムの実家にも電話したが、ここ数年連絡をとっていないからわからないと言われた。
そのまま、二ヶ月経った。
仕事から帰ると、まず郵便受けを確認する。だいたい請求書かダイレクトメールだ。部屋に入ってテーブルにそれらを投げ出し、カバンをベッド脇に置く。ポケットから携帯電話を出し、ネクタイを緩めながらチェックする。
着信が一件あった。
留守電も入っている。
「ピッ。あ、鉄郎? 私。有紗。今から、そっち行ってもいい? ピッ」
時間は、今から三十分ほど前だ。車を運転していたから気がつかなかったのだろう。もうじき来るだろうか。かけなおそうと思ったが、非通知になっていた。
パスタを茹でることにした。有紗も来るのならと思い、二人分を用意した。時計を見るがすでに九時を過ぎている。まだ来ない。だいたい、有紗はいつも休日の昼間しか来たことがなかった。夜はツトムが家にいるから自由に外出できないと言っていた。大丈夫なのだろうか。不安に思いながらも、先に夕食を済ませた。軽くシャワーを浴び、缶ビールを開ける。
カシュ。
その時、玄関先で音がした。
ドサッ。
買い物袋を床に置いたような音だ。
有紗が来たのだと思った。
首に巻いたタオルで顔を拭きながら玄関に向かった。
「有紗?」
誰もいない。玄関を出てみるが、外に人の気配はない。その後も、起きて待っていたが、有紗が来ることはなかった。
高校時代からの友人、嶋田と会ったのは、それから三日後のことだ。職場が近いことから、普段から昼飯をよく誘い合う。
「おい、知ってるか。ツトムが失踪したらしいぞ」
嶋田はメニューを見ながらニヤニヤと笑った。平日でも昼間のファミレスはそれなりに混んでいた。
「いつから?」
「職場に来なくなったのが、二ヶ月くらい前って言ってたかな。ほら、良子っていたろ、コロッケ屋の。アイツのうちの近くらしいんだ、ツトムのアルバイト先のジーンズショップ。んで、たまに行くらしいんだけど、顔が見えないから聞いてみたら、行方不明なんだって。突然来なくなったらしい」
通りで携帯が繋がらないわけだ。
「どこ行ったんだろうな」
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