はえ

　おっほん。わしはハエである。ちっこいなどと言うでない。
わしらは地球上で一番速いのじゃ。何が言いたいかわかるかな？
ハエははえー。昔ながらのオヤジギャグじゃ。
おっ、あの家にうまそうなステーキ。さっそく行ってみよう。

　ハエは舐めるだけで刺さないんじゃよ。知ってたか？
ハエが乗ったからと言って必ずカビやウジがわくわけではないんじゃよ。
昔のえらーい科学者のパスツールって人が証明してくれておるのに
人間どもはわしらを叩きたがる。

　はえたたきで蚊やぶよも叩いているではないか。これでは虫たたきではないか。
でもカブトムシが叩かれているのを見たことがない。小さい虫たたきか。
いや、でもありが叩かれているのを見たことがない。小さい飛ぶ虫たたきか。
いや、でものみが叩かれているのを見たことがない。小さい羽のある飛ぶ虫たたきか。
なんか長いな。もう、ハエたたきでいいわい。

　ステーキステーキ。素敵なステーキ。
うおっ、うまそうな肉汁。ではいただきマース。

「ママー、ステーキにハエが乗ってるよ～。はやくよけて～」

こりゃっ、なんでわざわざ親にチクるんじゃ。
よーしうけてやる、わしのすばしっこさを見届けい。ベチャ
　肉汁で足が濡れてしまった。うごきにくい。
ステーキの上からハエたたきは来んじゃろう。
殺虫剤なんかふっても食べられなくなるもんな。
わしの作戦、逃げないは大成功。
んっ、なんと箸でつまむ気か？これは予想外。
箸にもご飯粒のつぶれたのがついているから
羽なんかつままれたら飛べなくなっちまう。
逃げなくては、でもステーキ…
ギャッついてない。ついに捕まっちまった。
生きたままゴミ箱行きになるのか。
残念無念。ではさよなら。