第2話 #2

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* 「恋……」 最近の日課になっているのは、寝る前にシモンの屋敷の方向の空を見上げること。 胸の奥でうずくのが、恋? 毎日が、輝いているような気持ちになって何をするときもシモンのことを考えてしまって、なのにこんなに苦しいのが――恋……。 「シモンは?」 返ってくるはずのない質問を口にしただけで胸が苦しくなる。 自分よりも大人で、初めは心を開いてくれなかった人――。 そのころを思い出すと、少しおかしくて。 でも、今では笑顔を向けてくれる。 優しい声で名前を呼んでくれる。 大きな掌で、髪を撫でてくれる。 シモンは苦しくなったりするのかしら――。 「ないわね」 窓ガラスに映る自分を見て溜息をつく。 幼すぎる。 子供すぎる。 シモンに釣り合うレディじゃないわ――。 否定の言葉ばかりが浮かんで消えていく。 毎日がその繰り返し。 もし、シモンの目が見えていたら、相手にすらしてもらえていないかもしれない。 そんな不安だってある。 それでも、思わずにはいられない。 考えずにはいられない。 会いたい気持ちが大きすぎて、苦しくて、早く明日を迎えるためにベッドにもぐりこむ。 早く時間が経つことだけを願って……。
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