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《2年後》
ったく、遅いな。
「ごめん、お待たせー。」
そう言って、やっと姿を現した千奈美に
思わず釘付けになる。
そんな俺に気が付いたのか、
「どう?似合う?」
と、笑ってみせるけど。
いや。覚悟はしてたんだけど、さ、
…マジ、綺麗だな。
「うん、すげー。」
崩さないように、遠慮がちに抱き寄せる。
「千奈美、めちゃくちゃ綺麗だよ。」
「…うん、ありがと。」
このままこうしていたいけど、
今日は、成人式なわけで。
「よし、行こっか。」
「うん!」
会場前の広場に集まる色とりどりの人の群れ
「おーい、健ちゃん。」
俺を呼ぶ声の主を二人で探す。
「あ、あそこ」
手を繋いだままそちらに近付けば、
懐かしいメンツが顔を揃えていた。
「千奈美ちゃん、マジで綺麗。」
挨拶より先にそんなことを言うダチ。
「ありがとう。」
「相変わらず、仲いいんだな。」
そう俺に言ってきたのは、義人で。
「どうも。
あ、番場ちゃんは?」
「とっくに別れたけど?」
うん、知ってる。
本当は知ってたけど、わざわざその名前を出してみる、ちっさい俺。
「あ、美紀いた。ちょっと行ってくるね。」
さっさと友達を見つけて行ってしまった千奈美を眺める。
「マジ変わんねー。大好きだよな。」
「悪い?」
「いや、良かったと思って。」
「は?」
「俺、千奈美ちゃんのこと好きだったんだよ。」
「……」
「知ってた?」
「まぁ。」
「だよな。
だから、まぁ。二人が変わらず幸せそうで、良かったな、と。」
「ちょっかい出すなよ?」
「……」
「義人、てめぇ、」
「出さねーよ。ってか彼女いるから。」
ったく、意地悪い顔しやがって。
「健ちゃん。みんなで写真撮ろう?」
友達を連れて戻ってきた千奈美に
一瞬で頬が緩む俺。
「マジ、ウケる。」
そんな義人に、千奈美が不思議そうな顔をするけど、
「頭おかしいから、気にすんな。」
そう言って、千奈美とその場を離れた。
お互いに中学、高校といろんな友達に会って、
くっついたり、離れたりしながら、
懐かしい顔との会話を散々楽しんだあと、
「楽しかったね。」
「ん、良かったな。」
「うん。あ、ねぇ、このあとどうする?」
「千奈美の着物を脱がす。」
キョトンと、俺を見る千奈美。
「もー!なんでそうなるの。」
「ダメ?」
「ダメ!」
おしまい。
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