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紅葉に彩られていく森の木々たち。
木と木の間から優しい木漏れ日が降り注いでいるそんな秋の昼下がり。
「確かこの辺なんだよなぁ…、ミアのお墓。」
カサカサと茂みの中を掻き分けて、目的のお墓を探す犬山サク。
「もー!サク兄ちゃん、あの時ミアのお墓に目印つけようといったのに何でつけなかったのさ?兄ちゃんのバカ。」
後方でついて歩く犬山ハルは執拗な蜘蛛の巣に何度も引っ掛かりながら、頬を膨らまし、ぶつぶつと兄に文句を言った。
「目印つったってあの時埋めた場所が大きな樹の下だったじゃないか。その樹を探せばミアが眠っているお墓があるよ。確かナラの木だったかな。」
サクはその樹を目指してさらに茂みの奥へ、蜘蛛の巣を絶妙にかわしながら、歩き進んでいく。
ハルはさらに頬を膨らませ、立ち止まる。
「…バカ兄、この森全部ナラの木だっつーの。」
ハルは木の枝をもって蜘蛛の巣を巻き取りなから茂みの奥へ消えそうになる兄について行った。
探すこと一時間。
サクがうろ覚えでそれらしきなナラの木にたどり着いた。
「…ここ木の下にミアのお墓があるの?」
「ああ、間違いないけど、獣たちに掘り起こされて荒らされてる。ほら、ここに花を入れていた空の牛乳ビンがある。」
サクは樹から数メートル離れたところに転がったビンを指さす。
ハルは少し悲しげな顔になり、うつむいた。
「可哀想なミア…、あんまり来れなくてごめんね…。」
ミアは昔、まだ幼稚園児だったハルが持ち帰ってきた白の野良猫だった。もちろん、両親は飼うことに大反対で当時中2だった兄、サクも猫飼いたさにどーにかこーにか親たちを説得するが効かず、結局弟の泣き通しでココロが折れて飼うことになった猫だった。
《ミア》と名付けたのはハルで、鳴き声がミア、ミアからとったそうだ。
だが幸せのつかの間、ミアは散歩中に交通事故に遭い、亡くなってしまった…。
あれからもう一年。
「このままじゃ、可哀想だからミアのお墓作り直そうよ?」
ハルは掘り起こさた土と小さな骨を元の様に埋め直しながら、兄に言った。
「あぁ…、今度は分かりやすく、綺麗なお墓をつくらないとな。」
サクも埋めながらハルに言った。
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