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「新しいお墓なら、この上に石を置こうよ。石にミアと名前書いて分かりやすくするんだ。もう探さ回らないようにね。」
「墓標みたいなものを作るのか。それにふさわしい良い石探さないと。ハル、ナイスアイディア。」
「へへっ。」
兄からの言葉に照れ臭いのか泥でついた手で鼻を触り、顔が汚れしまった姿にサクは思わず吹き出して笑った。
「森の中に適当な石がどこかにあるかも知れない。ハル、手分けして探そう。」
「うんっ!」
ハルは汚れた鼻を服の袖で拭きながら、サクに言った。
「俺は向こうの森の茂みの中を探すから、ハルはあっちの森の茂みの中を探してきてくれ。石があったら俺を呼べよ?わかった?」
「わかった。」
二人は手分けして石を探すため、向こうの森とあっちの森へと別れた。
サクは森の茂みの奥へ進む。
(適当な石なんかないなぁ…。あ、これはどうだろう…。駄目だ、ゴツゴツしててミアの名前さえ書けないや。)
屈み込んで石を探すが、なかなか見つからない。見つけたと思えば小さすぎたり、逆に大きすぎたりとサクが思い描く様な石が見つからなかった。
進むいくうちに向こうの森から声が聞こえた。
「兄ーちゃんー、あったよぅーっ!」
ハルの声だ。
サクは急いでハルのいる向こうの森へ行くことにした。
うっそうとする茂みを掻き分け、ハルのいる場所はミアの墓からかなり遠いところにあり、茂みを切り開いたところでハルが立っていた。
目の前には崩れた石垣らしきものがあるが、それは明らかに誰かが昔造ったと思えるものの様にサクは思えた。
「兄ちゃん、あの石がいいと思うんだ。」
ハルは崩れた石垣の上に立っている中くらいの石柱を指さした。
「あれならミアの名前が書けて、分かりやすいと思うけど…兄ちゃん?」
何だろう…とても嫌だ。
サクはどうしてか石垣の側まで行きたくなかった。
「兄ちゃん、あの石運ぶの手伝ってよ。なんでそこから動かないのさ??」
ハルは不審になりながらも兄を手招きする。
行きたくない。
手に汗が滲む。心臓がドッドッと早く脈を打つ。
何だろう…どうして俺はハルのところに行けないのだろう…?不安がよぎって仕方がない。
「な、なぁ…、もっとべ、別の場所でさがないか?ハル。」
サクの頬から汗がツーと流れ落ちた。
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