軽井沢の過ち

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>>>>>>> 由美は本当に悔しかった。 ありもしないことを言われて、 自分が浮気しているかのように 言われたことが、本当に心外だった。 あれほど夫に浮気をされて つらい思いをした自分が、 同じことをするわけがないのに。 それよりも、 由美は真田の妻のことのほうが 気がかりだった。 いっそのこと誤解したままのほうが いいのではないか。 このまま、なにもなかったことにして、 一夜の間違いだったということに してしまえば、真田先生も 真田先生の奥さんも そのほうが幸せなんだろうと、 心の底では思っていた。 しかし、真田に惹かれている 自分の気持ちを抑える以上に、 真田に誤解されていることが 由美には我慢できなかった。 「真田先生がそんな風に 私を見ていたなんて知りませんでした。 でも、ファンの1人になら、 と言ったのは、私が夫に浮気されて すごく辛い、悲しい思いをしたから、 奥さまのいる真田先生とは お付き合いしてはいけないと 思ったので、お友だちならいいですよ、 と言う気持ちでお断りするつもりで いったのです。私には 今お付き合いしている人も、 恋人も残念ながらいません。 でも、真田先生を好きになって しまったのは事実です。 あの夜、真田先生なら あんな過ちはおかさない、 そう思っていました。 でも、私も自分の思いは おさえきれませんでした。」 涙を拭って由美は話し続けた。 真田は腕を組ながら 黙って聞いていた。 「ても、やっぱりやめましょうね。 真田先生の奥さんを 悲しい目に遭わせるのは わかりきっています。 あの夜の事は私の思い出として、 大事にしまっておくことにします。」 吹っ切れたような 少し悲しいような笑顔を向けて、 由美は真田の目を見つめていった。 そして由美の本心は とうとう真田の心に 届いてしまった。
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