第一幕 迷い人

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「うわぁ!?」 思わず悲鳴をあげる。 振り返ると男性が立っていた。 白衣を着て、いかにも研究者、といった風貌をしている。 隼羽が驚いたのがおもしろかったのかくすくすと笑っている。 「そんなに驚かなくてもいいのに。君はこの世界に迷い込んだ人なのかい?」 「!はい、そうなんです!気づいたらここにいて。ここって一体どこなんですか?」 「ここ?ここはね…………うーん、言葉にすると難しいな。私にとっては楽園かな?」 「楽園?ですか?」 隼羽は内心首を傾げる。 こんな不気味な場所が楽園とは思えない。 顔に出ていたのか男性が笑顔で続ける。 「そう。ここは自分の好きなことができるんだ。だれにも何にも邪魔されずね」 男性はさらに笑みを深くする。 「設備も経費も考えなくていい。法だって気にしなくてもいい。どんなことでも自分の気が向くままに研究できるんだ!」 男性の笑みは変わらない。 研究できる喜びを心の底から純粋に表現している。 なのに、なぜか背筋に冷たいものが流れる。 脳が何かがおかしいと訴える。 -この人、なんかやばくね? 隼羽は無意識に後退る。 男性は気づいているのかいないのか、そのまま言葉を続ける。 「それでね、今研究しているのは外の世界の人についてなんだ。君、外の世界から来たんでしょう?外の世界の人の標本なんてないからその身体、研究に使わせてよ」 そして変わらない笑顔で注射器を手に、隼羽に飛び掛かってきた。
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