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「うわぁ!?」
思わず悲鳴をあげる。
振り返ると男性が立っていた。
白衣を着て、いかにも研究者、といった風貌をしている。
隼羽が驚いたのがおもしろかったのかくすくすと笑っている。
「そんなに驚かなくてもいいのに。君はこの世界に迷い込んだ人なのかい?」
「!はい、そうなんです!気づいたらここにいて。ここって一体どこなんですか?」
「ここ?ここはね…………うーん、言葉にすると難しいな。私にとっては楽園かな?」
「楽園?ですか?」
隼羽は内心首を傾げる。
こんな不気味な場所が楽園とは思えない。
顔に出ていたのか男性が笑顔で続ける。
「そう。ここは自分の好きなことができるんだ。だれにも何にも邪魔されずね」
男性はさらに笑みを深くする。
「設備も経費も考えなくていい。法だって気にしなくてもいい。どんなことでも自分の気が向くままに研究できるんだ!」
男性の笑みは変わらない。
研究できる喜びを心の底から純粋に表現している。
なのに、なぜか背筋に冷たいものが流れる。
脳が何かがおかしいと訴える。
-この人、なんかやばくね?
隼羽は無意識に後退る。
男性は気づいているのかいないのか、そのまま言葉を続ける。
「それでね、今研究しているのは外の世界の人についてなんだ。君、外の世界から来たんでしょう?外の世界の人の標本なんてないからその身体、研究に使わせてよ」
そして変わらない笑顔で注射器を手に、隼羽に飛び掛かってきた。
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