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世界の終わりのような赤黒い空に枯れた草木しかない大地。
遠くにぽつり、ぽつりと建物が見えるがどれも廃墟のように人気が感じられない。
何の音も聞こえない無音の状態がこの世界の不気味さを一層引き立てる。
そんな生命の息吹や存在が感じられない場所に。
だれかが倒れていた。
行き倒れのようで周囲には肩から下げた大きな鞄から出たであろうものが散らばり、投げ出された手足に力はない。
だが羽織っている丈の長い黒いコートはわずかに上下している。
気を失っているだけのようだ。
しばらく経った頃、倒れていただれかはむくり、と起き上がった。
コートに付いた土を払うのもほどほどに辺りを見回す。
風景と鞄から散らばったであろうものを交互に見て首をかしげる。
なぜこんな場所にいるかわからないといった様子だ。
だれかはふと何かに気づいた。
倒れていた場所からほんの少し離れた場所。
白い仮面が落ちていた。
だれかはそれに近づくと拾い上げ、不思議そうに眺めた。
顔全体を覆うほどの大きさの仮面は笑顔でも泣き顔でもなく無表情だった。
「…………」
何を思ったのかだれかは仮面を着けた。
仮面は当然だとでも言うようにだれかにぴったりの大きさだった。
仮面で顔を隠しただれかはつぶやく。
「私は一体何だ?」
無表情のはずの仮面が一瞬、別の表情に変わった気がした。
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