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ふと、何かの声が聞こえた。
だれかは足を止めて声がした方向を見る。
だれもいない。
「?……気のせいか」
薄暗い夕闇の中でもさすがに人の有無は見分けられる。
空耳かと思い、また歩き始めた。
違和感に気がついたのはすぐだった。
道に迷った訳ではない。
好奇心から知らない道に入った訳でもない。
ただいつものように見慣れた通学路を歩いていた。
それだけだったのに。
目の前に広がるのは荒野。
荒れ果てて、申し訳程度に枯れた草木が生えている。
さっきまで聞こえていた雑踏も聞こえない。
不気味な静寂が支配していた。
「……なんだよ」
だれかは呟く。
明らかにいつもと違う場所。
それどころか現実ではありえない場所で。
現実逃避のように。
「ここはどこなんだよっ…………!」
呆然と呟いた言葉は静寂の中に消えていった。
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