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耳がある音を拾った。
その音が示した事実に口角が上がる。
「やっと新しい人間が来た」
中世の貴族さながらの豪華な部屋。
窓辺に立っていただれかは芝居がかった動作で振り向く。
「どれだけ待ったか」
にやり、としたままの表情は崩れない。
心の底からのうれしそうな、愉しそうな、それでいて底知れない不気味さを感じさせる笑み。
だれかは笑う。
ここにはいないだれかに向けて。
「君がどうしようと私は止めない」
ただ、笑う。
道化師のように。
「だって、最後に笑うのは私だからな」
狂った笑みを浮かべただれかは仮面を被る。
仮面は仮面の下の表情と同じようににやり、と笑っていた。
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