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 塹壕(ざんごう)を出ると、銃声が一層激しく身体に響いてきた。飛び交(か)う銃弾のすべてが自分を狙っているように感じられる。タツオは自動小銃を胸に抱え、小走りに左右にステップを踏みながら後方に叫んだ。 「右の突撃隊に合流する。五十嵐(いがらし)くん、続け」  レーザー拡散用に銀の風船を腹に下げたラジコンヘリが左の突撃隊に向かっていた。敵の指揮官は冷静だ。五王龍起(ごおうたつおき)はこちらの戦力を完璧に分析している。右の攻撃隊は指揮官のジョージが負傷して、クニが死亡。中央の守備隊はタツオと五十嵐以外は塹壕のなかで全滅。塹壕の外に逃れたテルがひとりで狙撃銃を撃ちまくるだけだ。  3組に残された主な戦力は、東園寺崋山(とうえんじかざん)が率いる左翼突撃隊の7名だった。敵の死体を盾(たて)にした小型台車にとりついて、カザンの突撃隊は模擬戦場のほぼ中央に位置する大型台車に進軍していく。
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