黎明の章

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それは溢れんばかりに街道を埋め尽す兵馬の行列であった。 夥しい数の徒歩武者、 携える長槍が槍衾の如く乱立、 時よりその横を物々しい馬蹄を響かせながら騎馬武者が駆け抜けていく。 威風を放つ、 堂々たる王者の行進。 駿河、遠江、三河の三ヶ国を勢力下に置く戦国大名・今川義元率いる三万の軍勢であった。 永禄三年五月、 今川義元は全軍に出兵の命を下した。 五月十二日、 義元は嫡子・氏真を府中に残し出陣。 西進の目的は上洛して将軍に拝謁し、この軍勢の威容と威勢を持って兵権を掌握して天下に号令を掛けることである。
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