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「注進、注進!」
忙しく馬を走らせながら、慌しく母衣武者が駆け込んでくる。
「早馬なれば、乗り打ち御免候え!」
母衣武者の嗄れた声と、生々しい矢傷が事態の急を物語っていた。
母衣武者は転がり落ちるように馬から降りて、矢の突き刺さったままである肩を押さえる痛々しい状態ながら懸命に注進した。
「すでに丸根、鷲津両砦が一重二重に敵勢に取り囲まれてござりますれば、合戦開かれ幾許も保ちませぬ!」
「何卒、早急に身継ぎの人数をお繰り出し下さりますよう、お願い申し上げまする!」
周りに居並ぶ家臣、馬廻り衆共に一斉に動揺が走った。
しかし、その中心に居座る織田信長は冷めた表情のまま使い番の母衣武者に手短に応えた。
「大儀、傷の手当てをいたせ」
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