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「はぁ…さみぃ…」
白い息を吐き出しながらつぶやく男ー内島郁也は寒さに耐えながら一人でホームに立っていた。
真冬と言える季節なのに郁也の服装は余りにも軽装すぎた。
モコモコのファーが着いたダッフルコートに細身のジーンズ、スポーツメーカーのスニーカー。もちろん、マフラーや手袋などは一切つけていない。
いくら若いからといってこれとどの軽装で寒くない訳がない。
郁也は実家に帰省していたことを半ば後悔しはじめていた。
駅のホームの時刻表には郁也が乗る予定の電車は20分後となっている。
片田舎の駅には、駅ビルや屋内施設なんてものは一切ない。唯一あるとすればベンチだが、これは木製のベンチで長年雨に当たりすぎていたせいで、半分腐りかけている。
以上のことから寒空の下、郁也はただ突っ立って20分後に来る電車を待つしかない。
「だぁー!早く電車来いよ!お袋とおっちゃんたちのバカー!!」
郁也は空に向かって叫んだ。叫び声は空に向かって消え、後には郁也の吐いた白い息が上に向かって伸びて行くだけだった。
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