第1話

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: : : : : 「さみぃー…」 5時間近くかかった実家への帰省も着いてみればあっといまのようだった。 愛用のバイクにヘルメットを掛けてガレージに横付けする。 寒さから真っ赤になった手をこすりながら久々の実家の玄関の扉をスライドさせる。 この地域では鍵をかける習慣は根付いていない。 その理由は『周りが年寄りが多いし、取られたらそのときは諦めるのがよし』と昔から口を揃えて大人たちはいうからだ。 かじかんだ手でいまでは滅多に聞くこともなくなったガラガラと少々立て付けが悪そうな音を立てるわりには案外すんなりと扉は開いた。 玄関に入ると懐かしい匂いが漂ってきた。 独特のこの匂いの正体は玄関のすぐ近くにおいてあるぬか漬けの壺からだ。 毎年決まった時期になると、みんなして野菜をぬか漬けにする。そして頃合いをみてぬか漬けを掘り返して近所どうして交換する。 ぬか漬けを掘り返す時期や時間はその家によってそれぞれだからある程度の時期になるとしばらくの間はぬかの匂いが周りを漂っている。
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