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FとWのブーイングを聞き流しながら、2人を無理矢理テスト勉強の世界に戻した瞬間だった。 潰れたカエルのように机にへばりついていたK君が僅かに動いた。
「……これはツクらなきゃならんな。」
潰れたカエルは蛇になっていた。 彼女は普通に起き上がったのだろうが、動作がゆっくりだったためか、私の脳には『鎌首をもたげる』と言う言葉が浮かんでいた。
眼鏡の奥の、切れ長の目が半月型に歪んでいる。 そういえばごく最近発行された『師匠シリーズ』と言う名の書籍をK君は持っていた。 なる程、真似っこか。
恐らく、怪異に出逢いたいが、怪異が無かったものだから不完全燃焼を起こしているのだろう。 いや、火が点いてもいないか。
化けの皮が剥がれた悪役のようにゆっくりと立ち上がり、芝居がかった様子で彼女は言う。
「歴史あるこの学舎にちぃっとも影が無いのはおかしいじゃないか。 学生達の間でまことしやかに語り継がれる怪談の、1つや2つや3つや4つ、あったっていいだろう。」
少しは絞れ。
「でも、どうやって作るの?」
Yが訊ねる。 K君は、やっぱり演技臭い動きでニタァ、と笑った。
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