第1話

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13/反撃の始まり 1  ワシントンDC ホワイトハウス 午後14時15分 「由々しき事件だ」  ランバート特別大統領補佐官は薄くなった頭を撫でながら不快そうに長嘆した。  ホワイトハウスの一室……特別補佐官専用オフィスで、この部屋の主であるアドリュー=ランバートと、FBI・NY支局長コール、そしてユージとJOLJUが集まり、たった今ユージからの報告が終わった所だ。ユージはヘリでの移動中に報告書を書きデーターで送っていたから、簡単に事件と時系列を説明するだけで余計な時間はほとんどかからなかった。  あれから拓とコンタクトを取っていない。つい十数分前、サクラからJOLJUに電話があったがろくな話はできずただ一言「武器を入手した」という報告があっただけだ。 「手が全くないわけではないと思います」  ユージはそういうと、ノートPCを横に置き足を組んで座りなおす。 「今回の事件は、いわば<数え役満>です。1つずつ役を潰していくしかないかもしれません?」 「ヤクマン? なんだね、それは」 「中国人がよくやる卓上ゲーム、麻雀の事です。例えですよ。簡単にいえば、小さいポイントを沢山稼ぐ事でランクアップさせるということです。敵はそういう小さい犯罪を積み重ねこれほどの計画を立ててきたわけですが、逆にいえば、こちらも同じようにピンポイントに叩き、その中でも有効な犯罪行為を摘発して計画を頓挫させることは可能だと思います」 「つまり……あれかね、別件で追い詰めるという事かね?」 「簡単にいえば、その方針です」  ユージは座り直し、言葉を続ける。 「強引な手でいえば、少なくとも俺の相棒と娘は米国籍。この二人は今襲われていますから、容疑者に米国人の関与があれば米国法で逮捕できます。後は、現段階では推測ですがハミルトン社と軍部の誰かが関係していることは予想できますし、彼らに関しては殺人教唆、反逆罪に問う事もできるでしょう。他の関係者も少なくともB・メーカーの賭けに参加していれば賭博法で引っ張れます。そうして関係者を潰していって……あるモノを入手する。それが今考えうる最良の行動です」 「あるモノ? ……ウイルスか?」 「いえ」ユージは首を横に振る。 「ワクチン……もしくは抵抗薬のようなものは存在するはずです」  ランバートとコールはノートPCを引き寄せユージの報告書のその箇所を開く。
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