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「確かに報告書では、それがない以上商品として価値がないとあるが…… 細菌兵器であれば必ずしもワクチンが必要とはいえまい?」
「いえ。存在していると思われます。どうもこのウイルスは飛沫感染でウイルス保菌者への接近は危険です。しかしサタンを含め<死神>側は防弾対応はしているようですがウイルス対策は完全とはいえない。あのマスクが飛沫感染予防、硬い防具服が接触幹線予防だと思いますが…… 生物兵器に使うような物騒な代物が漂う島の中を動き回るには不十分です。ワクチンはあると考えていいでしょう。そのワクチンをこちらが押さえれば、この強毒性変異狂犬病ウイルスの兵器としての利用価値は下がります。運良くこのゲーム中……もう二日しかないですが、その間に入手できれば取引自体無くなるかも知れません。今はそれを優先するべきかと俺は思います」
「そのためには特別チームの必要があると考えます」
コールはパソコンから頭を上げ静かに周りを見渡す。ランバートも同意見……いや、すでにその一歩先に進んでいた。
「すでに信用できる筋で、CIAの極東担当チームの中から何人かに打診している。ただ指揮はミスター・クロベに執ってもらいたい」
「俺が?」
「お前はこういう超法規的な事件得意じゃないか」とコールはユージを見て「お前が事件に一番詳しい。場所も日本だ、お前が指揮を執るのがベストだろう」と、当たり前のように言う。
ユージは少し沈黙した。
事件を仕切る自信がないわけではないが、こんな大規模国際事件の指揮をFBI内の階級としてはレベル3の、現場主任レベルという人間がこれほど大きな、本来はレベル6の支局長が指揮するような事件を扱っていいものか。周りが納得するだろうか……
コールにも沈黙したユージの意図は重々分かっている。元々コールは組織の上下には煩い方だ。ちゃんと解決策も用意している。
「クロベ捜査官はCIAに出向という形を取ろう、レベル6の捜査官として。クロベ、お前は今からFBIでありCIAだ。CIAとしてはレベル6だ。問題あるまい」
「そこまでいうなら、構わないですよ」
あっさりユージは引き受けた。このあたりの図太さはさすがユージである。
「特別補佐官。チームはいつ動けますか?」
「CIAのほうは2時間もすれば特別室を用意できると思う。戦略専門家、分析官、そして特殊車両にヘリ、現場の急襲部隊1チーム」
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