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紫条家 東館。
「ナンや!? 銃声!?」
<こんぴら>の平山が地下から鳴り響いてくる音に作業の手を止め床のほうを睨んだ。すぐに<こんぴら>の近藤も飛び込んでくる。二人とも、手には拳銃が握られている。
銃声は単発ではない。連続で…… これは明らかに交戦のしている銃声だ。
「なんで地面から音が聞こえるねん!?」
「地下か!? 誰かが地下でやりあっとるっ!!」
彼らも東館を色々めぐり地下一階の存在は知ったが、それ以上のエリアはまだ分からない。だがこの銃声はそれほど大きくない。この東館の地下一階ではなさそうだ。
だとすれば……これはどこだ?
「あーーーっ!! イラつくなぁぁぁぁっ!!」
近藤は喚きながら顔や首や腕を掻いている。すでに患部は爪あとが分かるくらい真っ赤だが、本人には止める様子も気にする様子もない。それを平山は鬱陶しそうに睨む。
「ええ加減にせぇ! ボリボリボリボリうざいわっ! くそっ」
そう叫んだ平山だったが、彼自身気付いていなかった。自分も先ほどからしきりに首の一部を引掻き続けている事を。もう傷口からは少量の血が出ていた。
紫条家 地下施設 1F
「片山さん! もう一度援護頼みます!!」
拓はそう叫びながら、セミ・オート・モードにしたイングラムM10を強く握りこむ。
10m先の路地に<死神>が待ち構えていた。
拓たちはT字路で対峙……相手にとっても死角になる左側、主に<死神>と対峙する右側に拓が入っている。拓の後ろで涼、宮村の二人が息を潜めていた。武器は拓がイングラムM10、片山がHK G36Cを使っている。どちらもセミ・オートだ。
拓がもう一度身を乗り出した瞬間、タイミングを見計らったように<死神>がSMGを乱射する。バリバリと轟音が響くと拓の近くの通路が砕かれていく。
すかさず片山が応戦するが、その時にはもう<死神>は引っ込んでしまっている。
完全に『塹壕戦』の様相だ。釘付け状態で弾と時間だけが消費されるだけだ。
拓は振り返り宮村を見る。
「サクラが作った地図、回り道はないか?」
「ちょっと待ってよ捜査官っ! そんな簡単にはわからないって!!」
「ダメです、拓さん! どっちにしたってかなり大周りになります!」
「了解」
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