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「その音が聞こえたら大声で教えて。大丈夫、聞こえなくてもいいんだ、あくまで保険。……じゃあ、そのボルトはそのままでマガジンを入れて」
ボルトダウン状態ではオープンボルトのSMGは撃てない。
先の戦闘で<死神>も同じくイングラムM10を使っている事は分かっている。昨日の戦闘でもイングラムM10を使った<死神>がいた。同じではないだろうが、こういう建物の中での戦闘ではイングラムM10は取り回しがしやすく制圧力も高く使用武器として理にも適っている。使い方は指きりで4、5発ずつと明らかにプロの使い方だ。
拓は廊下ににじり寄り、そっと指を三本立てた。
2……1…… ゼロ!
全員が心の中でゼロを唱えた瞬間、拓が顔を出す。ガバメントは左手に持ち、顔を半分、左手と銃を<死神>に向けた。だが、すでに<死神>が待ち構えていた。拓が一発だけ撃つが、その直後<死神>が猛烈な反撃を加えてくる。それでも拓は、今度は完全に隠れず応戦する。<死神>も当然応戦を続けた。
その時……
「拓さんっ!」
涼は叫んだ。正に弾が<死神>のイングラムM10の猛攻が止んだのと同時だった。
……弾が切れた……!!
拓は無言で飛び出した。ガバメントは左手から利き腕の右手に持ち替えられ、左手にはマガジンを握っている。
ここからの拓の動きは完全にプロのものだった。
拓は片山の援護を受けながら駆ける。<死神>は完全に物陰に戻りこむ。
その僅か数秒の間で、拓は<死神>が潜む路地に飛び込んだ。
「!?」
驚く<死神>。丁度3mほど奥、新しいマガジンを交換し終えた時だった。拓が神業を見せたのは次の瞬間だった。<死神>がイングラムM10に向けようとしたが、それより早く一瞬のうちに拓のガバメントの弾が<死神>の手首を撃ちぬき、さらに胴体に4発叩き込む。だが<死神>は完全防弾スーツを着ている。これでは死なない。が、拓もそれを重々承知だ。
ほとんど一瞬のうちに拓はマガジンを交換すると、胸板に3発、さらに鳩尾に4発叩き込んだ。衝撃で思わず仰け反る<死神>。その一瞬の隙に拓は左手に持った最後のマガジンを交換すると、今度は<死神>の左足の甲、左膝を撃ちぬいた。
「!!!」
<死神>が声にならない悲鳴を上げる。45口径の衝撃で膝の皿が砕け、防弾加工のされていない足の甲は撃ちぬかれ、鮮血が吹き出す。
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