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<死神>が呻き声を洩らしながら暴れているところに、拓は渾身の力で蹴り上げ仰向けにさせると今度は胸を上から踏みつけた。
「!?」
銃によって打撃を与えた胸だ。防弾チョッキを着ているとはいえ至近距離で連弾……あばらにヒビくらいは入っただろう。その上を踏まれては動く事はできない。
「動くなよ? この距離なら関係なく殺せるぞ」
警告されるまでもなく、もはや目の前の<死神>は意志もダメージ的にも拓に抵抗することは不可能だった。血は両足からだけではなく、胸からも滲んでいた。45口径が肉を抉っていたようだ。もっともごく浅くのようでむろん生命の危機にはない。
そこに恐る恐る片山が顔を出し、それから涼、宮村の二人が後ろを気にしながら現れる。
「すっごい! さすが捜査官♪」
「<死神>生け捕りか…… これで情報が得られますな」
「拓さんは……あの……無事ですか?」
「ハハッ…… ま…… これでも現役第一線だからね。話せないンですよ、こいつらは」
<死神>のマスクには、マウスピースのようなものがついていて構造的に喋ることができなくなっている。そしてマスクを外せば頭を吹っ飛ばす設計になっている。
「でも、喋れなくても情報は得られます。例えば、こいつらの拠点に案内させるとかね」
「……………………」
喋れなくても目は見えるし耳は聞こえる。足も左足を潰しただけで右足は動くから歩く事が出来る。まさか確保できるとは思っていなかったが、こうして<死神>を捕獲した以上、最大限有効に利用する。
その時だ。
<死神>はダメージの少ない左手を少し挙げると………… 中指を立てた。
「!?」
「……………………」
中指を立てるのは主に米国で侮蔑の意味がある。
……負け惜しみか……?
拓は足でその挑発の左手を蹴る。その時、<死神>の胸が揺れた。
……笑った……? ……何か鳴ってる……!?
「!!」
その時、拓の直感が危険信号を発した。そしてこの状況下、機械の音……<死神>が笑って挑発するとすれば答えは一つだ。
「逃げろっ!! 皆っ!!」
「えっ!?」
「早く!!」
拓はそういうと<死神>を路地の奥に渾身の力で蹴り飛ばすと、落ちている<死神>のイングラムM10を拾い、そして駆け出した。
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