第1話

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 拓は訳が分からず戸惑う三人を掴むと、強く押し出す。 「伏せろっ!!」  拓は叫び、大きく前に跳んだ。  その瞬間、<死神>の体が爆発し、爆炎と爆風で地下施設が大きく揺れた。 「拓ちんめ。ハデにやってるなぁ」  紫条家敷地内 森の木の上でサクラは呟いた。サクラは大きな荷物は飛鳥の寝ている隠し部屋に置き、今はリボルバーと携帯電話だけを持っている。  サクラは拓たちと<死神>が戦っていた様子をずっと見ていた。NY経由でJOLJUからアドレスを教えてもらい、B・メーカーのゲーム画面からだ。爆発でカメラは壊れたのか、今は何も映っていない。 「ま、死んでないだろ、多分」  仕方なく画面を切り替えていく。  おかげで拓だけではなく、他のメンバーの動向や全体の動きも把握できる。単独行動を好むサクラにとっては便利なアイテムだ。  腕輪を外したサクラはともかく、飛鳥はまだ腕輪をつけている。ちなみに飛鳥は上手にカメラの死角をつき、居場所はB・メーカー側も把握できず表示はない。  だが……気になるのはサタンと<死神>の表示だ。  <死神>は、どうやら参加者が半径30m以内に入らなければ表示が出ないようだ。そしてサタンの表示は出ない。ユージたちの話では、先ほどのセカンド・ルール、サード・ルールが提示されたときは本館と東館の間の通路に表示が出たといっていたが今はない。 「サタンもコンタクトとらんと発現せんのかいカイ」  この辺り、ずっと地下を彷徨っていたサクラには納得できない点だ。本館と西館の間に倉庫群があるのは確認してきたがそんなに人の気配はあったか? 少なくとも<死神>数人……予備も含めて。そしてサタンの補助するスタッフを入れると、最低でも10人はいるはずだ。だがそんな様子は感じられなかった。 「作為を感じるな~」  元々相手が尋常ではないと分かった時から、ゲームの公平性は頭から信用していない。それでも賭けが行われている以上ある程度公平さは必要だ。サクラが付け入る隙があるとすれば、その運営側の微妙なバランスの中だろう。 「拓ちんが戻ったらちょっと仕掛けてみるかな」  作戦はある。拓が本館に戻り落ち着いたらこっそり接触しよう。幸い武器は揃った。  第二研究所にある武器庫の回収は飛鳥に頼んできた。道順とガンロッカーの場所、ピッキング機は置いてきた。飛鳥が行くかどうかは分からないが……
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