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「?」
サクラの耳に微かに喧騒が聞こえてきた。本館の方からだ。
理由は分かる。さっきの地下での銃撃戦と爆発に反応し、騒ぎ出したのだ。
しかしこの状況は拓たち本人でなければ解決しない。
サクラは一瞬介入するか迷ったが、よくよく考えれば本館組とサクラはほとんど接触がない。混乱に拍車がかかるだけだろう。
「ならあたしはあたしで行動するサ♪」
そう言うと、サクラは静かに森の中から跳躍し、紫条家西館を目指し飛んだ。
これだけの騒動……紫条家本館組も気づかないはずなかった。
篠原、河野の二人は紫条家本館4階のドアの前にいる。留守は田村に任せ、二人はパスワード鍵を自力で解除した。使用したのはクラッカーが舞い飛ぶほど細かく粉砕した粉だ。その粉を吹きつけ、ボタンについた指紋や油脂分に付着させ、使用されている2つの番号を割り出した。サクラが設定したのは『1212』という安易なものだった。サクラとしては、カメラモニターがどこにあるか分からないので、何を押しているかカモフラージュできるようあえて横同士かつ人間心理の裏を斯いてあえて単純なものにしたのだが、篠原と河野の二人はその意図を読み取った。
「やはり……」
篠原と河野は、表情に若干の不快感を浮かべ嘆息を洩らした。4階には誰もいなかった。
もっとも、あの激しい銃声を聞いたときから予想はしていた事だ。あれほど激しい銃撃戦ができるのはこの島では<死神>たちと拓たちしかいない。
「しかし捜査官たちはどこにいったんですかね?」
「というよりどうやって出ていったか……って事ね。片山氏もいないから、あの人もグル…… 宮村さんと高遠ちゃんはオマケだと思うけど」
「捜査官と片山氏が何を考えているのか」
二人の表情には不信感がありありと出ていた。
一応彼らは拓をリーダーとして立てているが、それは人望や信頼感からではない。拓の肩書きに敬意を払い従ってきた。だが、その拓が信じられない状況に今はある。
「戻りましょう。彼らがいないことを報せるかどうかはまた考えましょう」
「多分この部屋に秘密の通路とか階段があるはずよ、篠原君。探さないの?」
黙って部屋を去ろうとした篠原に河野は声をかけたが、篠原はあいかわらずあまり表情変えることなく静かに振り向き言った。
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