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「意味がありませんよ。それに、秘密のその通路の先……その結果が下から聞こえた戦闘の音でしょ? そんなパンドラの箱、開ける必要はありませんよ」
「それもそうね」
河野も篠原の意見に同意し、二人は4階を後にした。そして3階で、二人は村田と出くわした。村田は一人、ブラブラと本館の宝箱を漁り歩き回っていた。手には一つだけ宝箱が握られている。
「どうしたんですか? お二人とも、なんだか怖い顔しちゃって」
「貴方は危機感感じてないの? 村田君」
「え? ああ、なんだか下のほうで起きている騒ぎですか? もちろん気になりますけど、下からしたってことは、ここは安全って事じゃないんですかね?」と村田は暢気そうに答える。どうも彼は一人単独行動が多かった事もあり、あまり人の輪の中に入るタイプではないようだ。
そして、意外に洞察力は優れている。
「捜査官や片山氏があの音を聞いて降りてこない……そしてお二人のその顔…… どうやら上には誰もいない。戦っていたのはあの人たちのようですね」
「……………………」
「あははっ そんな難しい顔しなくてもいいんじゃないですか? あの音、どう聞いても銃声と爆発音……捜査官たちなら<死神>の一人くらいは倒したんじゃないですかね? だとすれば、少しの間は安全って事じゃないですか?」
「……随分余裕あるわね、キミ」
「あははっ♪ ボクはそういう性格ですから」
村田は笑いながら宝箱をポケットに入れ「じゃあ部屋に戻りましょうか。そこでどうするか決めればいい」と言い歩き出す。
篠原、河野もその後に続く。幸い拠点の当主書斎は近いから安全なエリアだ。
歩きながら、河野が村田の意味ありげな言葉に気付いた。
「決める? 何を決めるの?」
「何って…… これからどうするか、じゃないんですか? 捜査官は不在。そして捜査官は<自分に何かあったらASのサクラ君の指示を受けろ>……でしたっけ? でもASの二人は相変わらず姿を見せない。次に経験のありそうな片山氏もいない」
そこまで言った時、篠原がハッと気付く。
「……下の戦闘で、捜査官がやられた可能性は……ある。そういう事ですね」
「篠原君! 捜査官は慎重な性格で銃も<死神>に負けない…………」
そこまで言った時、河野も二人の言葉の奥にある冷たい想像に気付いた。
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