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「ごめんね、えーた君。遅くなっちゃって」
ハチマキを巻きながら謝るも、えーた君は笑っていた。
「ううん、ありがとう。このバカを連れてきてくれて」
えーた君...。
「おい、こらえーた。誰がバカだよ!」
「はぁ?そんなのお前しかいないだろ?...うちのクラスは今、総合三位。リレーで一位だったら、まさかの逆転優勝だよ」
そう言うと、中大路君の胸にパンチするえーた君。
「ふ~ん...上等じゃん。まさに劇的なわけだ」
逆転優勝...。
本当、神様はすごいよ。
まさかこんな最高の舞台を用意してくれるなんて。
これってまるっきり、昔のあの日と同じ状況じゃない。
予想できずにいた展開に、私の胸はより一層高鳴る。
「そろそろ入場になりますので、準備お願いします」
係りの生徒の声に、ビクッと反応してしまった身体。
始まる...。
大丈夫...。
今の私は、昔の私じゃない。
もうあんな過去を、繰り返さない。
目を閉じて、大きく深呼吸をする。
「入場して下さい」
その声に、前からゆっくりと進んでいく。
そして私も前へ進もうとした時。
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