あなたを信じても、いいですか?

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あの日と同じ。 だけど、今の私は違うから。昔の私とは違う。 「中野さんっ!」 三番目にバトンを渡され、一気に走り出す。 前を走る二人との距離を、少しずつ縮めていく。 懐かしい...この感じ。 あの日もそうだった。 頑張って練習して、絶対に中大路君に一位でバトンを渡すんだって思って、走っていた。 ただそれだけ考えて、前を見つめたまま全力で走った。 より一層騒がしくなる歓声。 一人抜かして、残るのは数メートル前を走るただ一人だけ。 「柚歩ちゃーん!!」 そしてその先には中大路君。 頑張れ。あと少し...!! ラストスパートをかけ、一位の子と並び、そしてあと少しで中大路君へバトンを渡せる位置にまできた時、急に横からゼッケンを強い力で掴まれ、身体は大きくバランスを崩す。 ーー...う、そ。 それからは全てスローモーションのように写った。 すれ違いざまに見えたのは、怪しく笑う女子の顔。 あっ...この人...!! よくオリエンテーションの時、詰め寄ってきた人達と、よく一緒にいる人だ...。 私の横を一気に駆け抜けて行き、私の視線は地面へと向かっていく。
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