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どうしよう。
私、また転んじゃうんだ。
せっかく一位で中大路君にバトンを渡せそうだったのに...。
諦め、ギュッと目を瞑ってしまった瞬間、頭の中に響いてきた声。
『絶対俺、一位になるから』
さっきの中大路君の言葉。
そうだ...まだ終わってないんだ!!
次の瞬間、一気に身体中に襲ってきた痛み。
そして私の横を通り過ぎていく人達。
あの日の私は、突然の転倒に驚いてしまって、すぐに立ち上がれなくて。
だけど、今は違う。まだリレーは終わってないんだ!
「柚歩ちゃんっ!!」
私を呼ぶ中大路君の声と、大きな歓声。
これは昔と変わらない。でも、今の私は昔と違う!
すぐに立ち上がり、最後尾の人達と並んで、中大路君が待つゴールへと向かう。
足も腕も痛い。
だけど、まだ止まるわけにはいかない。
だって、中大路君が待ってくれているから。
あの日とは違って、私を応援してくれている、中大路君が待ってくれているからーー。
「柚歩ちゃんっ」
あと数メートル。
「中大路君っ!!」
最後の力を振り絞り、中大路君の手にバトンを繋げる。
「見ててっ」
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