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笑顔でバトンを受け取り、そう言うと、中大路君は勢いよく走り抜けていく。
そして私の身体は、勢いのままバランスを崩し、また地面へと向かっていってしまった。
「痛っ...」
それでもすぐに顔をあげて、中大路君を見つめる。
「嘘...」
中大路君はみるみるうちに、次々と抜かしていく。
「あなた、大丈夫!?」
「はっ、はい」
転んだままの私を心配して、先生が駆け寄ってきてくれて。
どうにか立ち上がり、中大路君の姿を目で追う。
「出血しているじゃない!手当てをしましょう」
そう言って私の腕を掴む先生。
「待って下さい!ゴールするまで見させて下さい!」
「でもっ...!」
「お願いします!」
「...分かったわ」
再度強く言うと、納得してくれた先生はゆっくりと戻っていく。
「おぉっと!アンカーの中大路君、ついに並んだっ!」
その声に、すぐに中大路君を見ると、最後のコーナーを曲がり、ゴール間近。
一位の人と並んでいる。
アンカーは一周。私が今いる場所がゴールになる。
あと数十メートル。
必死に走る中大路君。
なかなか抜かすことができない。
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