中学時代

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通り雨:  雨が降り始めた  ぽつりぽつりと  僕は思わず屋根の下に入った  雨はゆっくりと語りかける  木々たちが雨と戯れ  その緑の葉に生気を宿す  人は彼らの下に立って雨宿りだ  雨はさらに語りかける  明るい光が漏れる向かいの 家からは  子どもの声が聞こえた  「おやつの時間」  と待ちきれない声  なぜだか僕の目から涙が溢れ  雨は強さを増していく  暖かい飲み物がほしい  傘がほしい  必死で走った子どもの頃  欲しかったものは手に入らなかった  ふと気付けば道を行く人も  私のとなりで雨宿り  「やぁ参りますね」  そう微笑む恰幅のいい紳士は  全く困った様子でなかった  テレビの天気予報が耳に入る  雨のち晴れ  私は雨の中に走り出た  全身がびしょ濡れになって 私は叫んだ  ありがとう
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