壱と運命ー①

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佐藤は背が小さい方だったが、小柄な彼女の放つ無垢な笑顔は癒しそのものだった。 どこか子供っぽさも伺えたが。 「そいじゃ始め!」 場外の石切戸の合図と共に、真ん中に置かれたボールが操作された。 現在敵側の籐桐が操っている。 籐桐もアレで中々上手い。 ボールは軽々と人を抜き、籐桐は遠くにパスを回した。 しかし………… 「あめーよ籐桐くんっ」 「あーっ!!!小研お前ーっ!!!もう出し惜しみしなくなったのかよ!!!」 「昨日からだ」 ボールを受け取った涼は昨日と同じく五人抜き。 まさしくデジャヴ。 真ん中まで到達した。このまま『稲妻渡り』をしてしまおうか。 いや、自分はそこまで空気の読めない男では断じてない。 涼はそう脳に言い聞かせ、ゴール近くで準備済みの佐藤に向けて狙いを定める。 「エスワイ!」 ふいに口から言葉が飛び出してしまった。佐藤は細かく二度頷くと、ゴール前に向けて駆けて行った。 涼は思い切ってボールを蹴り飛ばす。 丁度いい位置にボールは飛んで行き、佐藤も予想通りの場所にいる。 後は彼女がどうするかだ。 佐藤は胸でボールを受け止めると、ボールが地面に落ちるまでの間に一回転した。
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