5人が本棚に入れています
本棚に追加
佐藤は背が小さい方だったが、小柄な彼女の放つ無垢な笑顔は癒しそのものだった。
どこか子供っぽさも伺えたが。
「そいじゃ始め!」
場外の石切戸の合図と共に、真ん中に置かれたボールが操作された。
現在敵側の籐桐が操っている。
籐桐もアレで中々上手い。
ボールは軽々と人を抜き、籐桐は遠くにパスを回した。
しかし…………
「あめーよ籐桐くんっ」
「あーっ!!!小研お前ーっ!!!もう出し惜しみしなくなったのかよ!!!」
「昨日からだ」
ボールを受け取った涼は昨日と同じく五人抜き。
まさしくデジャヴ。
真ん中まで到達した。このまま『稲妻渡り』をしてしまおうか。
いや、自分はそこまで空気の読めない男では断じてない。
涼はそう脳に言い聞かせ、ゴール近くで準備済みの佐藤に向けて狙いを定める。
「エスワイ!」
ふいに口から言葉が飛び出してしまった。佐藤は細かく二度頷くと、ゴール前に向けて駆けて行った。
涼は思い切ってボールを蹴り飛ばす。
丁度いい位置にボールは飛んで行き、佐藤も予想通りの場所にいる。
後は彼女がどうするかだ。
佐藤は胸でボールを受け止めると、ボールが地面に落ちるまでの間に一回転した。
最初のコメントを投稿しよう!