壱と運命ー①

6/59

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/302ページ
*朝の日差しもろくに差さない曇り空が窓に映った。 ぽつぽつと雨でも降ったらかなわない。 そんな日でもコイツのテンションは変わらない。 「なぁなぁ。俺がいない間になんかあったのかよ!気になるだろ教えろよ!」 「ああああ……………そのノリだりぃよ……………。ただでさえ昨日は吉良井先輩と須木先輩の大げんかに付き合わされてんのに…………」 熱も無事に低下し、今日から復帰の籐桐 紅馬ははしゃいでいた。なんせ二日ぶりの学校の景色。ざわめくクラスメイトの声。全てが懐かしいのだ。 その中でひときわ異彩を放つのがこの男、小研 涼。一昨日の童貞魔法使い事件、昨日の先輩ケンカ事件。どれも二日に凝縮するには大きすぎるものだった。 そのためか、疲労はくるところまできている。 「誰か…………オレに癒しを…………」 「私の出番だね!」 「お前で癒しになるならとっくに話してるっつーの…………」 しゃしゃり出る椎成を軽く制す。 彼女は不満げに頬を膨らせるが、涼は見る気力すら無い。 「せめてオレの話をマジメに聞いてくれる奴がいればなあ…………」 「咲ちゃんは?」 「アイツは休み………。昨日からどうも具合悪くなったらしーな………。何故かオレんとこに電話きた…………」 「俺なんて話してすらねーぞ?」
/302ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加