第16話

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目の前にいるのに。 まだ不安で……。 ゆっくりと自分の顔をオオカミさんに近付ける。 受付で無視されたあの時、オオカミさんと過ごした時間は、夢だったんじゃないかって思った。 でも、今――。 わたしの唇は、オオカミさんの唇の熱を感じてる。 少し冷たくて。 柔らかくて。 ――だめ……また泣きそう……。 それを堪える様に、唇を離して、また合わせる。 目を開けて、オオカミさんの顔を確認して、また目を閉じて口づける。 ふぅっと漏れたオオカミさんの息が熱くて。 だんだん真っ白になって行く。 苦しかかった心の中も……。
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