第16話

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「笑わないよ」 「もう、笑ってるじゃないですか!」 ごもっともな切り返しに、苦笑いがでてしまう。 「これは、楽しいから笑っちゃうんだよ」 「――本当ですか?」 「そう、本当」 手の力を緩めて、赤ずきんの顔を自分の方に向ける。 ちょっと不機嫌そうないじけた顔も、愛しくて。 ちゅっとおでこに唇を当てる。 それに観念したのか、小さくつぶやく声が聴こえた。 「――優しい“お母さん”に、なりたいんです」 「おかあさん? お嫁さんじゃなくて、お母さんになりたかったの?」 少し驚いた。
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