第11話

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さっきまで遠くにいたオオカミさんが、すぐ隣にいる安心感がここにはある。 大通りから外れたオオカミさんのマンションまで、あっという間だった。 カードでタクシー料金を支払うオオカミさん。 「ありがとうございました」 タクシーの運転手さんに声をかけると、開かれたドアからわたしは外に降りる。 指先に残る温もりに思わず自分の手を添える。 左手は冷たくて、オオカミさんの温もりが消えそう――。 「行こう」 立ち止まっていたわたしの手をとると、オオカミさんはマンションに向かって歩き出した。 たった一晩会ってないだけなのに。
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