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「おい、神山ぁ、さっさと部屋から出ろ!!」
鉄格子から看守が辛気臭い顔を覗かせて叫ぶ。
同時にカチッと俺の入っている独房が解錠させられた。
やかましいな。クソが。抵抗してないのに怒鳴るんじゃねえよ。
「よっこらせ」
別に痒い訳じゃ無いがめんどくささから頭を掻いて、重い腰をゆっくりと上げる。
そのまま、看守が解錠したドアをゆっくり開いて部屋から出る。
キィィィィィィィィィィ。
ドアを開ける際に、金属がこすれる嫌な音が俺の耳を貫いた。
「とうとうか……」
俺はある一つのことを悟っていた。
死刑囚には死刑執行の日程は知らされない。先に知らせとくと恐怖だか、なんだかで死刑執行される前に自殺しちゃう弱虫がいっぱいでちゃうって理由で。
だから、死刑囚ってのは今の俺のように不意に看守に連れられた瞬間に自分の死期を悟るんだ。
カツーンカツーン
5mおきごとに配置されている電球の一つがもう切れかけているのだろう、チカチカと点灯しながら照らしている廊下に俺と看守の足音だけが響き続けた。
コンクリートで出来た地面は、びっくりするほど足音を大きく響かせる。
覚悟は出来ているから恐怖は無い。人を殺してしまったんだ。この国の法律上死刑になるのは当然の報いなのだろう。
「ここだ」
鉄製の立派なドアの前にたどり着いた。
「さっさと入れ」
看守が顎でドアを指して、俺に命令する。顔だけじゃなく、行動もムカつく野郎だ。
重たいドアを両手でゆっくりと力を込めながら開けて、俺はその部屋に入った。
「なんだ。ここは?」
天井に輝く数多のライトに照らされた。薄暗い廊下からいきなり明るい所に入ったことにより、目を細めずにはいられない。
果てしなく広がる木製の床に果てしなく高い天井。遊具こそないがその場所はまさに体育館だった。
床の上をキュッキュッと靴で妙な音をさせながら歩く。
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