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「準!」
抄が少し離れた場所から、片手をあげている。
準は、心からその笑顔が好きだった。
「抄さん、ごめん、遅れて」
準もまた笑顔で応える。
こんな風に待ち合わせるようになって、二年が過ぎようとしていた。
「いや、俺も今、来たとこ」
抄は、コートのポケットに再び手を戻すと「腹へってない?」と準を優しく見る。
「いや、大丈夫だけど、寒いからどっか入ろうよ」
準は、そのまなざしを避けるように、視線を泳がせる。
準の中に迷いがまだあった。
けれど、今日こそ、別れを告げるつもりだった。
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