第1話

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   なるほど。 この男には私が自殺願望者に見えて、躊躇っているようだから止めるべく腕を掴んだワケだ。  おそらくは善人なのだろう。  思って。 私は一応ながらも礼を言おうと考えた。 「どうもあり「先を越されては毒気を抜かれる。 出来るなら、俺の後にしてもらえないか」 「………………」  こちらの言葉を遮る、男のまさかの発言に。 私は言葉を失った。 一見、そういうタイプの男には見えないのだが、思って首を傾げると。 「今日を逃すとまた1年、グダグダと同じ日々を過ごしてしまいそうなのだ。 今日こそは決行したい。 だから今、…このチャンスを譲ってくれ」  男の手は、いつの間にか私の両肩を掴んでおり。 彼の真剣な目が、射抜くような力強さで私を見ていた。 「参考までに、自殺の理由を伺ってもいいですか?」  訊ねると。 彼は表情を歪め、目を伏せた。 潮風が、男の。癖のある短い髪を、狂ったように踊らせていた。  
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